ひとつ、ひとつの足跡が向かう先は決まっている

雨が続く。

東京も。

例年にはないほどの梅雨寒が続いていて、個人的な心持ちで言えば悪くはないと思うし、ある意味では体の弱い自分にはありがたいことでもある。

ここしばらくは空想の中ばかりに居ることが多い。

雑多な世界に身を置きながらもそれをとても嫌っている自分は、自宅のベランダ以外の外へもほとんど出ることがなくなった。

気がつけば週のうちで1日だけ100歩ほど先のコンビニエンスストアへ切れた煙草を買いに出ただけということもある。

つまりはきっとこの世界が苦手であり、反面的にこの世界を愛しているということだと思うのだ。

矛盾と逆説ばかりの中に自分の心と身が在ることを知る。

どういうことかと言えば単純だ。だって、私は外へ出ないのに皆が外へ出るための洋服を作り続けている。とすれば、やはり私が作る意味は自己顕示への欲望ではなく自己世界での認識の為の作業だと考える。

 

「唯ひとり」

 

そう言ってしまえるのであれば、私にとって必要なモノはとても少ない。

数冊の本(それはもちろん小説となる)と珈琲と煙草。

数足のブーツ。

 

一歩づつ歩くことは一歩づつ死へ近づくこと。

 

それはとても確かなことだから。